思案中

あなたの暇つぶしになれば

6時起き宣言備忘録

 「私は今週、規律と丁寧さに生活を捧げようと思う」

 

 最近読んだ小説が面白かったのでそれの主人公のセリフを真似し、LINEで友人にそう宣言した。

 

 

 あるところに押し入れがあった。ずっと家主に整頓したいなと思われつつ、めんどくさいから後回しにしようと、回しに回し続けられた押し入れがあった。回された回数は60回にも及ぶ。

 もはや何が押し入っているのか家主の私ですら分からない。魔窟と言えよう押し入れであったが、この度遂に整理するに至った。

 綺麗に整頓し、やりきったぞという達成感がすさまじく、「整った暮らしとはなんて気持ちの良いものなのだ」と、やった仕事に不釣り合いすぎる大げさな感想を抱いて気を良くした。

 さらにさらに、自身が整った人間になれればなおより良いことだろうと思ってしまった。そして日常の振る舞いを規律あるもの丁寧なものに変えれば人間性も変わり、整った人間になれるもんじゃないかね?と思ってしまった。

 

 で、宣言に至った。

 

 

 規律と丁寧さに生活を捧げる。簡単に言えばがさつな行動をしないということだ。

 

 ではどんな行動ががさつなのか。これからどんな行動をするのか。

 たとえば、当たり前の行動だけど、意識しないとできないことってのが、ありますでしょう?

 

 靴を脱いだら履き物を揃えるとか、使った物は元の場所に戻すとか、物を置くときは投げないとか、洗い物はためないとか、扉は脚で開けないとか、挨拶は人の目を見て言うとか、店員さんにはありがとうございますと感謝の祝詞を述べて一緒に踊るとか、その他諸々エトセトラ。

 

 そういうのを意識したいなと思ったのだ。少し手間ではあるがやってやれないことはない。

 

 問題は最後に「毎朝6時起きして散歩とコールドシャワーをします!」と宣言してしまったことだ。

 

 私は8時間寝ないと脳みそが死ぬし朝から冷たい水で皮膚を刺激すると心臓が止まる。

 

 にもかかわらず宣言してしまったのは、押し入れを整理して気が大きくなってたからだなぁ。

 

 押し入れの整理如きで気を大きくする私である。熱しやすく冷めやすいという言葉があるように膨れやすく萎みやすいという言葉もきっとあるはずだ。

 

 その言葉通りその2時間後に宣言を取り消したくなった。前言撤回だ。

 しかし既に宣言してしまったので急に取り消すというのもかっこ悪い。

 

 宣言の良いところはこうして自分を追い込めるところだ。一方悪いところは目の前がが崖なのに進まざるを得ないことだ。メリットとデメリットは表裏一体なのだなと、この世の森羅万象の一端の末端に触れた気がして私は悟った。私のせいでこの世界の悟りの概念が少し残念なものになったかもしれない。

 

 結論、私は頑張って6時起きと散歩とコールドシャワーを実践することにした。ちなみに友人には毎朝実績報告を行なうこととなった。

 

 以上が今週の日曜日の夜のことだった。

 

 実績を記録する。

 月曜日

 六時起き 達成

 散歩   達成

 シャワー 達成

 

 火曜日

 六時起き 8分寝坊したがまぁ達成

 散歩   達成

 シャワー 達成

 備考 午後6時を過ぎると一気に頭が回らなくなる

 

 水曜日 

 六時起き 8分寝坊したがまぁ達成

 散歩   達成

 シャワー 達成

 備考 定時頃から頭が頭痛で痛いという症状に襲われる

 

 木曜日

 雨降ってて、寝坊し散歩中止のうえ二度寝

 

 とまぁこんな感じだった(金曜は前日寝るのが遅くなったので無し)。続いたのは3日だけだ。

 

 私は行動について、やるやらないが割とはっきりしてる質だ。

 

 宣言してもやらないときは1日目からやらないし、やるときは割と継続できる。

 なので三日坊主という言葉の意味がイマイチ分からなかったのだが、よもやこのような状況で理解することになろうとは。三日坊主になる人間の心理状況は、やらない9割、やらなければならない1割、といったところか。「やりたくない」ではなく「やらない」で、「やりたい」ではなく「やらなければならない」なのだ。より強い否定とより消極的なやる気が9:1の状況になると、人間は3日しか活動できないようだった。

 

 三日しか続かなかった悔しさよりも、三日坊主という言葉の意味を身を持って腹に落とせたことへの不思議な満足感がある。私は満足感を覚える軸が常人と比べて変わってるんだなと思った。今更か。

 

 三日しか続かなかったが、散歩もシャワーも割と気持ち良いものだった。

 

 この時期はだいぶ太陽が低くなって光が柔らかくなる。夏の太陽の光は無色透明だが、この時期からは少しずつオレンジがかる。主観だけど。

 

 近くに河川があるのでそこを散歩した。朝なので静かで、人間の生活音に囲まれた時間しか生きていない私にはそれは新鮮だった。風と川の流れる音が際立つ。足下からは秋の虫の音が聞こえる。吹く風は少し肌寒い。なんかえもい。

 

 川の向こうには視界いっぱいに山が連なっているのだが、朝の霧がそれにかかり幻想的な景色を作っていた。静寂と光と自然と、普段感じない刺激に五感が喜んでいる。様な気がする。

 

 静寂のなか自然を一杯に感じながらスタスタ歩いた。静寂のなか、自分の足跡が一定のリズムで聞こえるのがなんか面白い。静寂って何回言ってんだ。

 

 わんこ散歩おじさんに挨拶し、散歩のついでにゴミ出しもした。

 最近、ここの住人はゴミをちゃんと奧にいれるようにしているみたいだ。良きことだ。

 手前に置かれると次の人が困るので、そういう時は私がゴミ置き場の中に上半身を入れて、キレながら奧に移動させたりしていた(自画自賛したい。)。

 または私の代わりの人間がでてきたのかもしれない。それだったら気の毒だな。私は助かるが。

 

 皆が少し配慮するだけで、この世は上手く回るんや。とかありきたりなことを考えたりしてアパートに戻る。

 

 そのあとはシャワーを浴びるが、冷たいと死ぬので少し暖かめだ。それでも目は冴えるので十分意味はあるはずだ。時間には余裕がある。ゆったり朝飯を準備し食べた。間に合わないこともあったが、できる限り「いただきます」の挨拶は忘れないようにしている。

 

 時間があったので本を読んだ。いつもより沢山読めるのが嬉しい。

 ふだんづかいの倫理学というやつだ。夜は小説、朝は小説以外の本を読むことにしている。面白くて分かりやすい。この本は日常に倫理学を使える様になることを狙って書かれており、そこに興味を惹かれた。

 だって使えない知識を頭に入れてもねぇ。

 部屋も頭もものは少ない方が良い。世はまさにミニマリスト時代である。決して私の脳のキャパの問題では無い。

 

 出勤前に植物に水をやる。今育てているのは3体で、月花美人(多肉植物)、ガジュマル(木)、象牙丸(サボテン)だ。サボテンは購入して2年目で、体はまだ小さい。しかしなんと、つぼみができているのだ!花を咲かせてくれるみたいだ。何色なのか、どんな花が咲くのか。楽しみである。

 

 こんな風に振り返ると、早起きも悪くなかったな思う。

 

 死ぬほど眠かったが。

 

 あと夕方一気に疲れるところもキツい。

 しかし朝に余裕をもって行動できるというのはなかなか気分が良いものだ。

 

 成功者は朝を大事にするというが、少しだけその気持ちが分かった様な気がする。

 ずばり、気持ち良いことが増えるからだ!キツいことも増えるがな!

 

 これを書いてる間にすっかり夜中になってしまったが、明日の朝も6時起きをしてやる。

 

 この挑戦も一応明日までなのでな。

 やりきれよ自分。

 

追記

無事にやりきりました。きっともうしません。