思案中

あなたの暇つぶしになれば

今週のお題「急に寒いやん」 けど寒いのも好きやで

 きっと関西弁になるくらい、ツッコみたくなるくらい、この人は寒かったんだろうな。今週のお題を見てまずそう思った。

 「急に寒いやん」という今週のお題

 予想も付かない速さで寒くなりよったわい、ということについては、私も同感なので心中お察しできる。

 

 「なんでやねん!急に寒いやん笑!」という勢いと元気さから生まれた「寒いやん」なら良いけれど、「・・・寒いやん。。。」という、急な寒さに対する苛立ちと嫌悪をから生まれた積年の恨みの如き感情を持つ「寒いやん」だったら、少し可哀想だなと思った。そして余計なお世話とはこういう時に使うのだなとも思った。

 

ーーー 今週のお題「急に寒いやん」

 

 

 吐く息が白くなるのはまだ先だろう。太陽は相変わらず皮膚を刺すような強さで降り注いでいる。

 しかし空気は涼しく風は冷たくなった。十五夜が終わり、彼岸も終わり、およそ日本の秋の行事は終わったような気がする。暑い暑いと言っていたら、いつの間にかこんな様子だ。9月はあっという間だった。いつの間にか、神様達が島根で会議をする時期になっている。そういえば、どうか素敵なご縁をくださいとお願いするのを忘れてた。ススキがフワフワとした穂を出して、ススキらしい見た目になって久しい。

 

 私は北東北に住んでいる。この前実家に帰る途中、峠にさしかかった時のことだ。寒そうだなと思いながら、道路の脇に立ってある電光掲示板をチラリと見た。気温は10度を下回っていた。いくら何でも寒すぎる。しかし、標高の高いところは、この季節にはその位にはなるのだ。

 それに、更に北には北海道先輩がいる。同じ北国である。先輩を差し置いて「うち寒くてぇ笑」などとはいえない。そんなこと言語道断だ。我が県が破門される。

 そんなバカなことを考えながら、運転していたら足先が寒くなった。暖房をつけようか迷った。

 

 たしかに、急に寒くなったなと思う。寒くなること、冬がくることを嫌悪する人間は多い。しかし個人的な感想として、寒くなることは悪いことばかりじゃないと思っている。

 

 私は「自然」と「国民行事」が好きだ。自然は季節そのもので、その移ろいを色濃く反映する変化が綺麗だし、日本の国民行事も季節ごとに多様な催しをするから私は勝手に楽しくそれを見聞きし時に参加する。これらがしみじみと時の経過を味わわせてくれる。

 

 冒頭でも述べたが、秋には秋の自然が見られる。

 ススキが穂を出したり、コスモスが咲いたり、そういえばこの前はリンドウも咲いていた。自然のなかでリンドウを見たのは初めてだったので、少し感動した。

 山に入ればキノコが出ている。キノコも色んな種類があるが、個人的に見て楽しいのは小さなキノコだ。倒木などに苔が生えていることはよくあり、そこにキノコが生えてることもよくある。顔を近づけると苔は綺麗なモスグリーンをしている。その上に小さなキノコが、傘を控えめに広げてスッと立っている。柄の細さは削り立ての鉛筆で線を引いたようで、傘は薄く、膜が太陽の光を通しそうだ。その小さく繊細な世界は、私達人間の世界では感じづらい。小さくても確かに存在し、生命を感じる。ジブリピクミンにありそうな世界観だ。ついつい見てしまう。人の目が気になる質なので、人が居る場所では上手く楽しめないのが少し辛い。見て良し食べて良しの山の幸。

 山の幸と言えば他にも、ヤマブドウアケビやサルナシなどが実る。人も美味しくいただけるし、山の動物達の食糧にもなる。ドングリやクリもそうだな。あれらは見るだけでテンションが上がる。

 もう少し寒くなれば紅葉で山は色彩豊かになり、その美しさをこの目で見ようとする観光客が、京都の嵐山などの各名所に集まるだろう。去年は上手く色づかない所が多かった様な気がする。上手く色づかないのは朝晩に気温がしっかりと下がらないせいだ。だが急に寒くなったこの頃だ。この調子なら、今年は綺麗にいきそうだ。

 田んぼを見れば米が実り、黄金色に輝いている。成長するほどに深く頭を垂れていく米を見ると、今年も豊作で良かったと思ってしまう。この反応をする日本人は多いのではないだろうか。私はDNAレベルで刻まれているものだと勝手に思っている。

 

 植物やキノコだけではない。虫や動物からも季節の移ろいは感じる。

 

 スズムシやコオロギなど、求愛の手段に羽をこすり合せて音を出す虫が秋には多い。そしてその音は美しい。だから古くから日本人に親しまれていた。江戸時代には「虫売り」という、今で言うペットショップ的な商いが存在していたらしい。

 もう少しすれば、雀がモコモコと膨らむ可愛い見た目になるだろう。あれは冬毛ではなく、羽毛に空気を入れて膨らまし、体温を維持しているのだ。

 一方、哺乳系(哺乳系?)の動物達は冬の支度として、体毛は冬毛に変わる。野生動物なら、寒い冬を乗り切るためにせっせとエサを食べ、脂肪を蓄えることに忙しい。そしてこの時期は熊がヤバい(彼らは年中ヤバいが)ので山に行く人はご留意下さい。

 

 暦では72候の「虫隠れて戸をふさぐ」が過ぎた。そのことから分かるように、自然も人間も冬の支度を始める頃なのだろう。

 

 暑さ寒さも彼岸まで。春の彼岸は寒さの終わりで、秋の彼岸は暑さの終わりだ。田んぼは収穫の時期に入り、束ねられた稲は秋の太陽の下に干されている。

 衣替えがあって、長袖の人が増えた。寒さに負けじと半袖短パンの小学生もいるが、多くの人間は10月を境に冬に向けて身辺を整理したり生活に変化がでたりする。

 冬服を出す、毛布を出す、湯船に浸かるようになる。ショウガを食べる、辛い物を食べる、鍋物を食べる。ストーブを手入れせずに放置していた人は掃除をしなければならない。毛布はカビが心配だ。寒くなってきてはいるが、できれば、コタツやストーブやホットカーペットなどは11月まで我慢したいところだ。ならば着込めばいいやと思った。しかし、ユニクロヒートテックはどこにやったっけか?

 

 たしかに寒くなった。急な変化で動揺したが、秋であることを考えればこれくらいの寒さが普通かもしれない。ブレーキをかけずに気温が下がり続けてしまうこととと、ブレーキをかけすぎてこれ以上寒くならない、なんてことにならなければ良いなと思う。ちゃんと秋があって、ちゃんと冬になって欲しい。そしてちゃんと春が来る。地球温暖化と異常気象、この2つが聞き慣れた言葉になってしまった現代では、難しいことなのかもしれないが。

 日本には四季があって欲しい。

 できるだけ緩やかに、しかしハッキリと、気温よ下がれ。